おバカ社員奮闘記 地区長編②

西千葉店は間違っても売上トップを目指すような店ではないし、私はチーフでは無いので、
気楽に売上を伸ばしていきました。
私の当時のスケジュールは午前中は西千葉店のデスクで事務作業やお取引先、各店、本社への電話連絡をして、午後から店舗巡回に出て5時ごろ戻り、夕方から夜はまた電話連絡や企画案づくりを進める、という感じでした。
ある日、巡回から戻るとスタッフのTさんが店頭まで小走りで私を迎え「お客さんがお待ちですよ」と言いました。
その日は店頭で「世界のアルバムまつり」という催事をしていました。店頭の軒から万国旗を吊るし、普段売らない様々なアルバムを販売する企画です。
「世界の」などというのは実はハッタリで、T社、F社の二社の協賛でめずらしいアルバムを持ってきてもらい、特売品と合わせて販売しているだけです。
フィルムのデモ販を組み合わせた、かつて北習志野店で成功した催事でした。売場の前に立っていたのは、髪を七三に分け三つ揃いのスーツ、黒く光る革靴の中年の紳士でした。
「すみません、お待たせしました」
「こちらのイベントを担当されている方ですか?」
「はい、そうです」
紳士は内ポケットから名刺を取り出して自己紹介されました。
「T百貨店 催事部の○○と申します」
「あ、西友フォートサービス地区長のNです」
ややこしい話になると困るので2階の応接室に案内することにしました。
ソファーに座ってもらうと
「世界のアルバムまつり、ですか。大変興味深く拝見しました。当社でもしていただけないか、と思いまして。」
「はあ、他社様からそのようなお話をいただくのは初めてなので上司に相談させてください」
私は冷や汗が出ました。「世界の」などというのはインチキであるとは言い出せず、失礼にならないよう店頭まで送りました。
「誰ですか?あの人?」高級なスーツの紳士の来店にスタッフも
緊張の面持ちでした。その日のうちに本社のK役員に電話して、紳士の話を報告し、インチキ催事のことも自白しました。
「わかった、名刺のコピーを送ってよ、こっちでなんとかするから」
K役員はわりと何でも気軽に引き受けてくれる人で、多少の不安はありましたが、名刺の拡大コピーをFAXし、てんまつを書いた報告書もK役員あてにメール便で発送しました。
役員がどう処理したのか分かりませんが、このことは話だけで終わりました。この催しはアタリだったのでその後他店でも
行いましたが、「世界の」という言葉は二度と使いませんでした。スーパーでの催事でも誰が見ているか分からない、
貴重な教訓を得たのでした。
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