おバカ社員奮闘記 こぼれ話①
おバカ社員奮闘記 こぼれ話①
おバカ社員奮闘記 こぼれ話①
西友フォートサービスは西友の子会社です。西友店舗内でカメラ売場、のちにミニラボの
DPEショップを担当しますが、子会社とはいえ西友からしてみれば取引先、テナント
ショップになります。
西友店舗の一角で店を営業しているので、当社は西友にお金を支払わなければなりません。
それは「歩率」といって写真の売上からは17%、その他商品販売は10%を西友に支払います。
各店では夕方、西友管理課の女性社員が各テナントを回りレジ精算をし、精算レシートを
持ち帰ります。
レジの精算キーは西友事務所で保管されています。
その支払い歩率は会社同士の決め事、契約のため変更することはありません。
ところが、この歩率を下げることができたのです。それは「短期消化伝票」というものを
使い、当社が催事業者と同じに一時的な取引を西友とする、という契約になります。
この「短期消化」を使うためには、その店、西友店舗に申請して店長の決裁印をもらう必
要があります。このことを知ったのは、私が木更津店でカメラバーゲンを催事場で行うと
きで、不良在庫のカメラを処分する目的のバーゲンのため、通常より利益が取れません。
そのことをたまたま西友の家庭用品課長に話したところ、「短期消化でやる?」と教えて
くれたのです。
手続きの方法を教えてもらい、申請書を書いて係長、課長の印をもらい、店長に持ってい
きました。総白髪で大人(たいじん)然とした貫禄たっぷりの店長は、私の話を聞いて
「おう、わかった」と大きな判を押してくれました。
申請書は西友側は本社の担当バイヤーに送り、私ども西友フォート側は本社商品部へ送り
ます。これで通常ならカメラ販売10%の歩率が、この催事売上にかぎり7%の支払いに下げら
れました。
カメラバーゲンは成功して、利益の確保もできました。
これは成功体験として私の記憶に残りました。
それから数年後、私は北習志野店でまたカメラバーゲンを企画しました。同店にはカメラの
不良在庫は一切なく、あくまで売上を上げるための催事として実施しようと考えたのです。
メーカー、問屋さんの協力を取り付け、フジ系の問屋さんの負担で折り込みチラシ2万部の
協賛も得られることになりました。「バーゲン」というからには、通常価格や他社の価格よ
り圧倒的に安くなければなりません。私の価格提案に取引先からは抵抗されました。
あまりに安く売られては商品が値崩れしてしまいます。
私はひたすら頼み込んでメーカー、問屋さんの了承を得ました。
しかし利益率が低くいため、このままではたいした儲けにはなりません。
そこで「短期消化」を西友にお願いすることにしました。
家庭用品のO課長は
「えー、7%でやるの?」
と気乗り薄の様子でしたが、チラシ2万部をこち
らで入れることを説明すると、
「分かりました。店長に頼んでみます」
と言ってくれました。
「OKでたよ」
後日O課長は私の書いた申請書にI店長の判をもらって持ってきてくれました。食品畑一筋で
当社にも協力的だったI店長はO課長の説明に「いいよ」と案外あっさり印を押してくれた
そうです。
準備は整い、店頭での6日間のカメラバーゲンはフィルム、バック、三脚などカメラ以外も
良く売れ、予算の150%の売上を作って無事成功しました。
その催事が終わって2〜3日後、内線電話で事務の女性が
「本社家庭用品の◯◯さんです」
と取次いでくれました。◯◯さん?はて?西友本社の当社担当バイヤーとしてその名前は
聞いたことがありましたが、私に何の用なのか?と思いながら電話に出ました。
「あんた、なに勝手なことしてんの?こっちにも予算があるんだよ」
「何の話でしょうか?」
「短期使って7パーでやっただろ!まず俺に言えよ!」
「ああ、あの催事ならI店長の決裁をとってますが」
「こっちにも話をしろと言ってんだよ!」
電話はガチャンと切れました。
家庭用品のO課長に聞いてみると、
「ああ、バイヤーにも予算があるんですよ。店長が決裁してるんだから気にしなくてもいい
ですよ。◯◯さんはI店長に文句を言えないからNさんに言ってきたんだよ、みっともない
なぁ、フォートさんは取引先なのに。」
つまり私は西友北習志野店での手順は踏んだのですが、本来は当社内でも事前に、地区長
(私)→販売部長→商品部→西友バイヤーと話を通しておく必要があったらしいのです。
私は部長には話していましたが、それが担当バイヤーには伝わっていなかったようです。
歩率を下げるのにバイヤーの了承が必要だということは知りませんでした。
西友の社内では一バイヤーより店長のほうがはるかに格上のため、私に文句を言ってきたよ
うでした。
その後、西友フォートは朝日メディックスに社名を変え、店舗もカメラ売場からDPEショップ
に変わったため、カメラバーゲンをすることもなく、「短期消化」で歩率を下げてもらう機
会もなくなりました。
西友社内でも色々な人間関係、上下関係があり、「筋を通す」のは難しいことだなぁ、と
感じた一件でした。
注)当時の西友と現在の西友はまったくの別会社です。現在の事情は違います。
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