おバカ社員奮闘記 地区長編⑬

営業活動に奔走する

営業会議終了後、地区に戻ろうと身支度をしているとK役員に呼ばれました。「貯金、ある?」
「またですかあ?」貯金というのは証明写真ボックスの営業活動で、すでにまとまっている案件が
あるか?と聞いているのです。それを事業開発部に分けて証明写真ボックスの営業担当者につけて
台数ノルマを達成しようというわけです。私はすでに5店舗の導入が決まっているビデオレンタルチェーン
の案件を役員に渡しました。K役員は私たち販売部門のほか事業開発部も担当していました。

全国に4000台の証明写真ボックスを設置して業界シェアトップになる、そして社員の給与も
大幅に上げる。ついては全社員が営業マンになれ。そういう社長の計画は遅々として進みませんでした。
店舗のチーフは営業などしたことはありません。社長の肝いりで作った事業開発部の証明写真グループ
には新卒の社員を配置しましたが、目標台数にはまるっきり届かず一台も設置できない社員まで
いたほどです。もちろん西友店頭には各地区長が交渉して設置していましたが、なにしろ4000台
です。グループ外の会社や店舗に導入してもらわなければなりません。

私は地区全店のスタッフに協力を呼びかけました。設置してみたい場所をFAXしてくださいと記入用紙を
送りました。もちろん店舗巡回時には口頭で頼みました。それぞれの地元の生活圏を知り尽くした
パート社員とアルバイトから続々と事務所にFAXが届きました。それを私が見に行き、これは、と思う
所と交渉して設置に結び付けていったのです。またよく行くお店の社員に話し、本社を紹介してもらって
地元のドラッグストアに11台まとめて商談を成立させたりもしました。私ひとりで月20台の設置を
決めたこともあり、常に複数の案件を抱えていました。店舗スタッフの提案で行ったパン屋さん系の
コンビニは、その本社に何度も通い、係長、課長、部長と商談して半年かけて取締役営業本部長に提案
することができ、テストケースとして3店舗に設置してもらうことができました。その件を営業会議で
報告すると、午後、社長に呼ばれ「俺が本部長と直接話がしたいからアポを取ってくれ」と言われました。

後日、社長のお伴をして本部長に会いました。すると「ぜひ御社の全店に設置させてください」と社長は
笑顔で申し入れたのです。まだ3店舗のテストも始まったばかりなのに、、、。私は性急な社長の話に
ア然としました。先方も面食らっていたようです。それだけ計画が進捗せず社長も焦りがあったのかも
しれません。「全社員が営業マン」のはずなのに、本社で仕事をしている人たちはあまり開拓せず、
全社一丸にはほど遠い感じがしていました。私が会社にいた間、いったい何百台設置できたのか知りませんが
、営業力の無さとメンテナンス部隊の能力不足、機械自体の故障が多かったことで、4000台設置は
遠い夢に終わったようです。