少年キングの「ここ一番!」~突然消えた相撲マンガ~
少年キングを購読開始!
小学生の私がいちばん最初に少年マンガ誌を購読するようになったのは1974年(昭和49年)の「週刊少年キング」です。5大週刊誌のうち、何故キングだったのか?はっきりとは分かりません。
それ以前には石森章太郎(のちの石ノ森)のマンガが好きで、単行本を集めていました。
収集していた少年キングは社会人になったとき古書店に売ってしまったので、74年の何号から買い始めたかもはっきりしません。けれど少年キングのマンガで一番最初にファンになった作品ははっきり覚えていて、原作・吉岡道夫、まんが・新岡いさお の「ここ一番!」という相撲マンガでした。私は幼いころから相撲が大好きで、明武谷、陸奥嵐の大ファンでした。
少年キングを読み始めてすぐに相撲マンガがはじまったので、とてもうれしかったのを憶えています。
「ここ一番!」が始まったのは25号で、順調に連載が続き、表紙になったりカラーページだったり編集部の期待は大きかったようです。
そして36号を買ったら載ってない!表紙には「ここ一番!」と書いてありますが、最終ページの目次はブランクになっていて作品名は載っていませんでした。ページをめくると「ここ一番!」のかわりに左馬一平・作「怪談十六夜」が掲載されていました。この作品の頁の横に、[おことわり]=新岡いさお先生がご病気のため、今週の「ここ一番!」はお休みいたします。と素っ気なく書かれていました。楽しみにしていたのでガッカリしましたが、「病気ならしょうがないな、早く治って続きを描いてくれるといいな」と軽く考えていました。
休載?打ち切り?消えた作品
翌週の金曜日、行きつけの「市村書店」でキングを買いました。家に帰って開いてみると「ここ一番!」は影も形もありません。目次の上の読者の意見に編集部が答える「私書箱0号」という欄で中学3年の読者の投書に答える形で「ここ一番!」は新岡いさお先生のご都合で、急きょ終わりになりました」と書いてあり、体の力が抜けるような気分になりました。気を取り直して、巻頭カラーの「アルプスくん」(水島新司)から読んでいくと後ろのページの次号予告に見開き2ページで新しい相撲マンガ「ごっつあん」原作・吉岡道夫、まんが・田丸ようすけ の告知が載っていました。その横に「おことわり」があり、新岡いさお先生が病気で、事実上「ここ一番!」の終了が大書されていました。病気が治ったら再開する、とは書かれておらず、休載といえど実際は打ち切りだったのです。以降、82年に少年キングが休刊になるまで、新岡いさお氏は一度も登場しませんでした。他の少年誌にも描いてないようでした。
新岡いさお先生とは?
「ここ一番!」が始まるまで新岡いさお、という漫画家は知りませんでした。このブログを書くにあたって調べてみましたが、どうやら北海道出身の方で、1969年ビックコミック新人賞に入選し掲載された作品がデビュー作のようです。その後、秋田書店の「まんが王」「少年チャンピオン」に寄稿していたようです。
少年キングへの初登場は72年の14号、「ごぞんじ『青空商売大繁盛』でした。そして17号に「甲子園汗と涙③『片腕の力投』」、30号から34号に短期連載「大ばか小ばか親子バカ」といずれもオリジナル作品を発表しています。
それよりもこの方は大人マンガの刑事ものが専門のようで「ゴキブリ刑事」という作品は「別冊週刊漫画TIMES」に連載され、73年に映画化もされています。少年キングの「ここ一番!」連載中は並行して「ゴキブリ刑事」を執筆中だったわけです。あまり多くの作品を描かれていない方で、調べるのもここまでか、と思いましたが、そこで興味深い本を発見しました。「マンガ界のウラの裏がわかる本」という1991年(平成3年)刊の元漫画原作者でライターの蕪木和夫氏の著書です。ここに「マンガ家ア・ラ・カルト」として、こんなことが書かれていました。
〈新岡勲〉
人呼んで”逃げ岡”さん。そのくらい連載仕事を途中で放り出して行方をくらましてしまう、劇画家として定評ある人。(以下略)
────と、いうことは小学生の私が病気を心配した新岡先生は原稿を描かずに逃げてしまったの?
この著者の蕪木氏は1975年に「ダブルエース」という作品で少年キングでデビューされた方で、その経歴からすると少年画報社関係者からの情報ではないか?と推察されるところです。
はじめてファンになった少年誌連載マンガは不幸な帰結となりましたが、それに懲りることなく、私は少年キングを読み続けていくのでした。
参考文献 週刊少年キング (少年画報社)
少年なつ漫王18号 (アップルBOXクリエート)
マンガのウラの裏がわかる本 蕪木和夫 (ぴいぷる社)
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