おバカ社員奮闘記 よもやま話⑥

こいつが部長?

「バカヤロウ、テメエ、フザケンナ、コノヤロウ!!」携帯が鳴ったので、左にウインカーを
出し、ハザードを点けて車を停めて電話に出ました。平日の数少ない休日、彼女とのドライブ
デートという名の競合店回りをしていました。「テメエのとこだけ何でSやAがこんなに多いんだ、
バカヤロー、何やってんだ、バーカ!」「S社長は成果主義、実力主義って言ってますよね?
売上も利益も大幅予算達成のスタッフにSやAをつけて何が悪いんですか!?」「バカヤロー、
お前の地区ばっかり高い評価、つけられねえんだよっ!」「ウチの地区はほとんどの店が予算
達成してますよ!高い評価つけて当然じゃないですかっ!」「ウルセー、バカヤロー、もういい、
俺が直すからな!」電話は切れました。


店舗スタッフの昇給評価は地区長がします。私が各店のスタッフに高い評価をつけたことを、
上司のK関東販売部長は怒り狂って電話をかけてきたのでした。


「どうしたの?何かすごく怒ってたけど」助手席の彼女はびっくりしています。「上司の部長
だけど、まあ、いつもこんな調子だから」「ひどい会社に勤めてるのね」


年に一回のスタッフの評価は上からS,A,B,C,Dの順でつけます。
私の地区は多くの店で売上、利益とも予算を達成していました。バブル崩壊後も前年の売上を
大幅に上回っていました。
スタッフがどれだけ一生懸命働いているかは私が一番よく知っています。
不当に高い評価をつけているわけではありません。

不公平な評価

他の地区では予算未達の店舗がたくさんありました。無能な地区長が上司では予算を達成できない
のは当然です。また地方の食品スーパーに続々出店した北関東の地区など、ほとんど売上不振で
苦しんでいました。スタッフがどれだけ誠実に努力していても予算に全く届かなければ、低い
評価にならざるをえません。


販売部ではそれぞれの地区に、S評価何人、A評価何人と平均して割り振っていたといいます。
そういうやり方もひとつの方法でしょう。しかし成果主義を標榜するなら、業績を上げた店舗の
スタッフに高い評価をつけるべきでしょう。

自分の評価を通す


本社に行ったとき、O人事部長に会い、評価について聞きました。「各地区ごとにSやAが何人と決めて
いるんですか?」「そんなことしてないよ」「K部長はそう言っていましたよ」「販売部で勝手に決めて
るんじゃないの?」「じゃあ私のつけた評価を通してください」「お前の評価は公正なの?」「もちろんです、
自信があります」「わかった、そうするよ」O部長は約束してくれました。


後日、私の総武地区は時給が高い、と経営会議で問題になったと聞きましたが、利益を十分に出しているため
私に何か言ってくることはありませんでした。


バブル終了後、当社も人件費削減競争になっていましたが、私は人を減らしたり、時間給を下げることは
絶対にしませんでした。


「無能な経営者ほど人件費を減らそうとする」これは現在にも通じる真理だと思います。