おバカ社員奮闘記 地区長編⑪

やっとの思いで1店オープン!そのあとも、、、。

県内のテナント情報を集め、またたく間に100枚入名刺ファイルは3冊になり、事務所に戻れば
物件のFAXが10枚以上届いている、、、、。そんな日々でした。これは、と思う物件を報告書にし、
K役員に送ります。20か所以上Kさんや開発部の人が見に来ましたが、どれもあと一歩のところで
社長のOKが出ませんでした。そんな時、親しくさせていただいている稲毛のWハウジングの社長から
連絡があり、イトーヨーカドー前の新築物件に入ってくれないか?との話をもらいました。見に行くと
2階建ての店舗を建築中で、2店舗入るワンフロアは約10坪、写真ショップにピッタリでした。
早速、図面、写真、報告書をK役員に送り、今度こそ出店したい、と言いました。役員が見に来て、
「いいじゃないの」ということで、今度は社長も見に来ました。社長は入口前の4段の階段を
スロープに直せ、と私に指示してOKしてくれました。

私が開発したはじめての店舗です。またK役員が図面を引き、私が手直ししました。10坪だと
売場スペースが8坪、バックヤード、シンク、トイレで約2坪のレイアウトです。自分で開拓
したからには絶対に失敗できません。チーフには正社員で部下にも思いやりがある女性のHさんを
任命しました。商品も写真用品のほか時計・電卓を入れ、写真のほかについで買いが出来る楽しい
店を目指しました。イトーヨーカドー前で人通りも多く、会社からは月商300万の予算が与え
られました。女性スタッフも4人採用して準備は進んでいきました。
こうしてアルム稲毛店はオープンしました。Hさんとスタッフは期待に応えてくれ、目標を大きく
上回る月商400万円を達成してくれました。西千葉の事務所から近いので、私もちょくちょく
見に行きました。

東池袋の本社で水曜午前の営業会議が終わると、私はすぐ地区に戻るようにしていました。とにかく
仕事が多く、1秒も無駄にはしたくありません。ところがその日はK販売部長に捕まりました。
「おい、N,鹿島をおまえがやれ、Oじゃもうダメだ」「え?鹿島って茨城県じゃないですか?無理ですよ」
「ばかやろう!銚子のとなりじゃねえかっ!」「いやです、鹿島が入ったら20店舗ですよ」
「うるせい!命令だ!」私は常磐地区のO地区長からアルム鹿島店を引き継ぐことになりました。
何とひとりで20店舗の担当です。目の前が真っ暗になりました。
時刻表を調べると千葉から鹿島神宮へ行く直通電車は朝の下り快速1本と夜の上り快速1本しかありません。
1店舗行くのに1日潰れます。翌週、鹿島店に行きました。カスミ鹿島店内の写真コーナーは、間口2メートル
奥行8メートルのウナギの寝床のような最悪のレイアウトでした。行きの電車で数字を分析しましたが、
月商わずか30万円、2人のスタッフで毎月10~20万円の赤字というどうしようもない経営内容でした。
売場の9割がミニラボを含む作業スペースで物販スペースは棚1台、売上を上げようにも手段が思いつき
ません。O地区長は苦しんだあげく毎日1人出勤の今でいう「ワンオペ」で人件費を減らしていました。
カスミの店長に挨拶した後、店内を見て回りました。するとテーブルと椅子を置いた休憩スペースがありました。
(ここをゲームコーナーにしたら、、、、)私はすぐにカスミの事務所に戻り、店長に窮状を訴えるとともに
休憩スペースを無償で貸してくれるよう頼みました。「何するの?」「ゲームコーナーにしますっ!今、流行の
プリクラとクレーンゲームをいれますっ!お客様が増えますよ!」店長はカスミ本社のテナント部のOKを
取ってくれました。私は図面を借りて、メジャーで場所を採寸すると急いで、しかし各駅停車で西千葉に
戻りました。急ぐ私は電車内で顔なじみのゲーム会社の営業さんと連絡を取り、明日にも店に行ってプリクラと
クレーンゲームが何台置けるか見てくれとお願いしました。事務所からすぐに図面をゲーム会社にFAXし、来週にも
入れたいからとにかく急いでくれと電話しました。翌日、営業さんから電話があり、6台置ける、これまでの
取引条件でよければ来週の設置はOKです、と返答がありました。スケジュールを必死に調整して設置に立ち会い
ました。ゲーム機は月120万円稼いでくれました。当社の取り分は25%の30万円、これでようやくアルム
鹿島店を採算ベースに乗せることが出来ました。この後、半年間担当しましたが、普段あまりに忙しく鹿島店には
1度しか巡回に行けませんでした。

ゲーム機で損益を改善したことを営業会議で報告すると、終了後、北関東のO地区長、K地区長が取引先を紹介してくれ
と言ってきました。会社は地方の食品スーパーに次々と出店しましたが、そのほとんどが大赤字で、OさんKさんは
毎週会議で社長に叱責されていました。それからはプリクラやクレーンゲームを設置する店が続出しました。
最新のミニラボを設置した写真コーナーならば、どの店でも利益が出せる、という会社の無計画な思惑は崩壊し、
それこそ「チェーンオペレーション」とは無関係のゲーム機設置という手段に地方の地区長は走ったのです。