おバカ社員奮闘記 地区長編④

カメラ売場から写真コーナーへ

会社は全店にミニラボ(写真現像プリント機)を導入することに決めました。ダイエー系のダイエーフォート
ではずいぶん前に全店ミニラボ化をしていましたが、当社は府中物流センターに自社現像所を作り、店では
写真の取次をしていました。けれどフィルムの現像プリントは1時間以内に仕上がることが当たり前になり、
当社も遅ればせながらミニラボを導入することになったのです。
ミニラボは、フィルム現像機と写真プリント機に分かれますが、ただ運んできてポンと置けば完了という
わけではありません。まず場所が必要です。狭いカメラ売場にそのまま設置できる店は無く、売場スペース
を広げてもらう必要があります。
西友の店側と折衝して店の改装時にスペースを作ってもらうことになります。


また電気と水道が必要です。電気は動力200Vという線を売場まで引っ張ってこなければなりませんし、
薬品づくりや補水、部品の洗浄のため水道とシンクは欠かせません。これは西友店内の設備を管理・工事する、当地区の場合はS産業、通称、保全さんと折衝します。これらの仕事は地区の責任者、私のような地区長の仕事になります。

まず担当店舗をまわり、西友の店長に説明して、何故ミニラボが必要か、西友にどういうメリットがあるか話します。
西友側のメリットとしては大きく2つ。ひとつは55分で写真が出来ることでお客様の滞留時間が延び、いままでよりたくさん買い物をしてくれること。もうひとつは当社が西友に支払う歩率(ぶりつ)は写真の品番が売上の17%と高く(物販は10%)写真の売上が上がるほど西友の収入が大きくなることです。
当社の本社からは西友の担当バイヤーに話をつけてあるので、すでに西友店長には文書が回っています。
しかし同意するか否かは店長の判断です。そこで私のような現場担当者が口頭で店長に頼み込むのです。多くの店長は理解して同意してくれましたが、1階はどこの店でも稼ぎ場所です。

中には首を縦に振ってくれない方もいらっしゃいました。どうしても1階のスペースがなく導入できなかったのは西友平井店でした。ここは1フロアの面積が極端に狭く、当売場は店外のプレハブ小屋でした。店長は2階ならなんとかスペースを作ると言ってくださいましたが、会社の方針として1階以外には導入しないことになっていました。
この店には超ベテランのパートさんDさんがいて、
「地区長、なんとか残してください、この仕事が私の生きがいなんです」と泣かれましたが、最終的には当社が撤退することになりました。泣く泣く退社したDさんにはひどく恨まれたと思います。