おバカ社員奮闘記 よもやま話⑧
西友フォートサービスのチーフに
西友フォートサービスのチーフというのは、西友店内のカメラ売場の責任者です。会社には部長など
上司がいますが、たまに巡回にくるだけで売場には自分より上の人物はいません。パートさんや
アルバイトと力を合わせて売上を上げ、利益を出す、店を問題なく運営していくのが仕事です。
西友の店内には様々な売場があり、店によってはテナントもたくさんあります。そしてカメラ売場は
西友店内では家庭用品課かサービス課に所属しています。
西友はそれぞれの売場毎に年次、月次、日割の売上予算を組み、担当課長や係長が管理します。
課長や係長は店長の指示により仕事をしています。小さい店から大規模店まで、西友は色々な店舗が
ありますが、その店の「カラー」を決めるのは店の最高権力者、店長です。
前置きが長くなりましたが、私がチーフとして、エリアマネージャーとして、大変お世話になった
3人の店長さんのお話をしたいと思います。
お世話になった木更津店K店長
最初は木更津店のK店長です。それまで私は幕張店、新検見川店、稲毛店と「カメラ売場」の概念を
壊して時計や電卓を派手に売って売上を伸ばしてきました。しかしかつて大型店だった木更津店には
時計店のテナントが入っています。電卓も上層階の文具売場が扱っていました。しかしあきらめて、
カメラやフィルム、アルバム、フレームだけを売っていたら売上の伸長は望めません。そのため電卓、
万歩計、電子体温計、物流センターにあった不良在庫のサングラスなどを導入して売場を作り替えて
いきました。それで売上は上がっていきましたが、物販の利益は少ないので、収益の大幅な改善には
売上を予算の倍くらい伸ばさなければなりません。狭い売場にこもっていては売上の倍増は不可能です。
そのため月に一回の店頭販売(ワゴンセール)、年に二回の大規模催事(カメラバーゲン)を開催しました。
西友木更津店の各売り場はとにかく静かで、よく言えば上品、はっきり言えば、売上を上げる気があるのか?
と感じていました。そんな中で売場でエンドレステープをかけるは、自分で店内放送をするは、ハンドマイク
をもって店外の通行人に呼びかけるはという私は完全に店の中で浮いた存在でした。けれどそんな私の企画や
販売促進をすべて認めてくれたのがK店長です。私は木更津店の1年間でK店長と話したことは2~3回しか
ありません。すべて家庭用品の担当係長を通じて、課長→店長という正規のラインで許可を得て行ったもの
です。「そんなこと無理だよ」と尻込みする係長や課長でしたが、なんとか頼んでK店長にお願いすると、
一度も反対されることなくすべて許可してくれました。おかげで売上は倍増、利益も大幅に改善して(前任者
のときは赤字店舗)、私は会社の使命を達成することができました。20代半ば、生意気盛りの私の言うことを
よく聞いてくれたと思います。白髪で貫録のあるK店長は、まさに大人(たいじん)の風格のある方でした。
信頼された名店長・北習志野店のI店長
私は北習志野店にチーフとして、さらに地区長として合わせて5年半いましたが、うち約4年間、面倒をみて
くださったのが西友のI店長でした。私が転勤してきたときにはもう在職されていましたから、ずいぶん長く
北習志野店の店長をされていた方です。
北習志野店ではそれまでの5店舗のチーフとして身に着けた売上を上げるノウハウを全開して、さらに新企画
を次々に考えて大暴れしました。その理由はただ一つ、全店1位の売上の店舗にするためです。私が赴任して
きたときには10位でしたから、普通に考えれば不可能なことです。しかし売場のロケーション、通行人の
多さを見て「いける!」と直感したのです。3年で全店1位を達成しましたが、1テナントの身にもかかわらず、
1年中店内放送をし、店外に向かってラジカセでエンドレステープを流す私をよくも黙って見守ってくれたものです。
北習志野店では西友の家庭用品部門における当社の売上比率が高かったため、課長も係長も全面的に協力してくれました。
けれど組織ですから、すべて店長の許可がいります。滅茶苦茶な私の販売活動に不快感を覚えたことも多かったと
推察しますが、たいていのことはすんなりOKしてくれました。特に七五三、成人式の撮影催事は西友側の全面的な
協力なくしては成功できません。「いいよ、やれ」平身低頭してお願いする私に一言、OKしてくれたI店長の決断力、
即決力には感服します。聞くところによるとI店長は食品出身だそうです。北習志野店は1階が食料品フロアーで、
本当に活気のある店でした。当社のK社長、N専務もよく来店して事務所でI店長と話をしていました。その後の
S社長も来店してI店長と話をしました。当社のトップからも信頼された名店長でした。
思いやりのある西千葉店Y店長
店舗のチーフを兼務せず、地区長専任となり、常駐店舗とさせていただいたのが西千葉店です。ここの西友には
私がアルバイト時代に幕張店でたいへんお世話になったY店長がいらして、地区長の事務所兼常駐店舗にさせてほしい
という私の申し出に快くOKしてくださいました。西千葉店は西友ではSM(スーパーマーケット)事業部という
小規模店の扱いを受けていました。店長の下は係長で、その下に一般社員がいます。規模が小さいということで、
私としては直接店長に相談できるという点でやりやすかったところがあります。
売上を上げるノウハウは前任の北習志野店でほぼ確立できたつもりでしたが、店の規模に応じた企画やイベントの
テストに西千葉店は最適でした。
会社が「カメラ売場」からミニラボを導入した「写真コーナー」へ転じる方針を打ち出したとき、まずY店長に相談して、
担当のS係長とともに色々な問題点を指摘していただいて、ミニラボ導入のテスト店舗になりました。
西友の忘年会や歓送迎会にも呼んでいただいて、西友の皆さんとも親しくさせていただきました。
Y店長はじっくり考えて答えを出す慎重型の方でしたが、私の提案にはいつも賛成してくれました。テナントを含む、
社員ひとりひとりのことをよく見ている、社員思い、お客様思いのやさしい店長でした。
地区長として担当店舗の多くの西友店長とお付き合いさせていただきましたが、私の場合「どんどんやってみろ」という
前向きな方のほうが相性が良かったようです。細かなことに文句を言われたり、ある大型店の店長のように「テナントは
おとなしくしていればいいんだ」という方はやりづらかったように思います。
20年以上前の話をしましたが、いまのようなギスギスした管理社会ではなく、様々な人が自由にアイディアを実現できた
いい時代だったと思います。
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