おバカ社員奮闘記 地区長編⑰

そしてとうとうゴミ捨て場に

総武東西地区、総武京成地区、そして総武地区と名称が変わるたびに担当店舗は増え、ひとりで
19店舗、さらに茨城県の鹿島店が入って20店舗を担当していました。尋常ではない忙しさで、
頭が変になりそうでした。携帯とPHSを持たされて、1日中、休日でも音が鳴りっぱなしです。
毎月スケジュール表を販売部に提出していましたが、自宅で仕事をしているわずかな休日も本社
各部から電話がかかってきます。販売部から各部に連動できていないのか、いずれにしろ私の休日
は平日です。土日はスタッフが出勤しているのに地区長の私が休むわけにはいきません。土日
のんびり休んでいる本社の「優秀な」スタッフが私のなけなしの休日にガンガン電話してくるのには
本当に腹が立ちました。

店舗巡回に行き西友事務所に顔を出して店長に挨拶すると「ちょっとお茶でものんでく?」と呼び止められる
ことがよくありました。「こんどXX、おたくに行ったんだって?」「ええ、△△部長になりました」
「あんな奴、引き取ってあんたの会社、大丈夫?」「■■もだろう?」「ええ、よくご存じですね」
「ウチは助かるけどさ、あんたのとこ、ゴミ溜めだねえ、」「、、、、、」こんなことを言われて愛想笑い
をするわけにもいかず、私は苦虫を嚙み潰したような顔をしていたのかもしれません。西友が不要な人物、
あるいは、厄介者を子会社に押し付ける、それを喜んで引き取り、よりによってラインの長につける当社の
経営者。何人もの店長や課長に「あんたの会社、大丈夫?」と心配されました。西友から来た商品部門長は
私の顔を見ると「Nさん、体、大丈夫?」「体を大切にしてくださいね」とやさしい言葉をかけてくれましたが、
その人がどんな仕事をしているのか、会社の役に立っているのか、サッパリ分かりませんでした。当社で
何の仕事をしているのか分からない人が何人かいて、そういう現場を一切知らない人にピント外れなことを
言われて私の方が混乱しました。
いつも私に「在庫、気をつけろよ」とアドバイスしてくれた元々経理畑の常務が「常務取締役 北海道販売部長」
なる珍妙な辞令が出て会社を去っていきました。プロパーの部長は誰もいなくなり、本社に残っている生え抜き
社員は少なくなるばかり。多数の応募者の中から入社試験を突破して入社した女子社員たちには気の毒で声の
掛けようもありませんでした。

地区長としての私はあまりに忙しく、心の余裕を失って各店舗への細かなフォローが出来なくなっていました。
仕事が終わらず、夜間スタッフの自宅に電話して問題点へのアドバイスをする始末で、本社が休日の私に
していることを私がしてしまい自己嫌悪に陥りました。会社は崩壊へ向かって、まさに秒読み状態でした