カメラ屋が明かす、『カメラ修理』の本当のはなし(フィルムカメラ編)

カメラの修理

お客様からカメラを買い取れば、修理業者さんに整備してもらってからショーケースに並べる。お客様からカメラの修理の依頼があれば、そのメーカー、カメラを得意とする修理屋さんに出す。私たちカメラ屋にとって修理屋さんは「命綱」です。
カメラ屋にカメラ修理を頼みに行ったとき、「このカメラは電子式だから修理できません。」という店は、修理に力を入れていない店です。電子シャッターのカメラでも部品を持っている修理屋さんと取引している店は、「それでは修理屋さんに出してみましょう」と答えるはずです。「修理できません」ではなく、「修理の出来る修理屋さんと取引ルートがありません」もしくは「電子カメラは修理できないもの」と信じこんでいるだけです。

修理屋さんは「腕」(技術)が優れていることは当然として、カメラが直るか直らないかは「部品をどれだけ持っているか?」によります。いかに腕が良くても交換が必要な部品を持っていなければ、カメラは直りません。金属部品とゴムで造られている昭和30年代までのカメラなら、整備調整、必要ならば金属部品を作ってしまうことで修理できます。しかし電池を使うメーターが採用された昭和40年代以降のカメラは、部品が必要となるケースが多々あります。電気部品がこわれているカメラを直そうとすれば、「腕」プラス「部品」が必須になります。もちろん、電気部品が日本中に全く無く、修理不能なカメラもあります。よく知られたところでは、ニコンF,F2のフォトミックファインダーでは修理できません。

電子シャッターカメラでも修理できるものもあります。(ニコンFE)

●修理屋さんが嫌うカメラ

医師に内科や外科、精神科、めずらしいところでは、放射線科や病理医など専門があるように、修理屋さんにも得意なメーカー、扱っていないメーカーがあります。当店はニコンならこの人、ミノルタならこの人、ペトリならこの人と多数の修理屋さんとお付き合いさせていただいています。
毎日のように修理屋さんとお話していて、技術者の方が、いやがるメーカーもあります。あえて実名を出すと、「フジカ」「ゼンザブロニカ」は評判が良くありません。それは部品の材質の悪さ、無理な設計、組み立て精度が不十分なカメラだからです。そういうカメラは、せっかく修理しても短期間で壊れて、再修理になるケースが多く、トラブルを嫌う修理屋さんのあいだでは、いやがられているのです。また「ペトリ」のような、いわば「安物カメラ」はもはや論外で、専門に修理をしてくれる会社にしかお願いしていません。

●絶対に買ってはいけないカメラ

いま、異常に価格(相場)の高いカメラがあります。例えばコンタックスのT2。インターネットでは10万円以上で販売されているものもあるようです。カールツアイスレンズの素晴らしい描写で定評のあるT2。しかしこのカメラは、仮に10,000円でも買わない方がいいカメラです。それは壊れたら、まず99%修理不能だからです。電子カメラの心臓部ともいえる「メイン基板」という部品が、もうどこにもありません。この部品が壊れていると、様々な症状があらわれますが、代表的なものとして、コマとコマが重なってしまう現象が発生します。この故障が出たら、もはや修理は不可能です。こういう致命的な問題を抱えたカメラは、我々カメラ屋は買取したくありません。しかしどうしても買い取ってくれ、と言われた場合、1日お預かりにして、テスト撮影をして、正常ならば私達カメラ商で使われている相場表のとおり、数千円から高くても2万円程度で買い取ります。そして「故障したら修理できないので、一切の保証はありません」とお客様に念を押して安価で販売します。こういうカメラをネットやオークションで購入するのは危険というより自殺行為と言えるでしょう。
もしこのT2を10万円近い価格で販売しているカメラ店があれば、その店は信用できない、と判断してもいいと思います。
そのほか、高値で危険なカメラとしては、フジ・ナチュラクラシカの前期型(カメラの操作ボタン表示が、日本語のもの)は部品が無く、メーカー修理はもちろん、修理屋さんでも修理できないので、購入は止めて下さい。後期型は2019年6月現在、修理可能ですが、あまり高い場合(例えば30,000円以上)は買わないほうがいいと思います。

素晴らしいカメラですが、修理まではできません(コンタックスT2)

「カメラ修理」についてはまだまだお伝えしたいことがありますので、いずれ更新時に書きたいと思います。