おバカ社員奮闘記 よもやま話③

行ってみたら、、、、

社長の命令で関西へ営業指導に行きました。本社営業企画のYさん、商品部のHさんと私の3人です。
当時、関西販売部は営業不振で、本部のマネージャー2人と現場のマネージャーの私が指名され、
店舗をまわって気づいたことをアドバイスする仕事でした。


K販売部長の案内で、ある店舗を訪問したときのことです。
本社から送られてきた腕時計が、メーカー製のボール紙でできたディスプレイボードのまま、フックに
吊るされていました。そこには何の工夫もなく、私はチーフの若い女性社員に、
「これでは売れるわけないですよ」と初対面にもかかわらず、ややキツいことを言ってしまいました。
うつむいた彼女の頬を一筋の涙が流れました。
売場は小ぎれいに整えられていましたが、「買いたい」と思うような感じはありませんでした。
毎月、予算が達成できず、彼女も苦しんでいたのでしょう。
こちらも色々とアドバイスをしたかったものの、根本から売場を作り替えないと、
お客様が立ち止まるようにはならないと思いました。


三日間かけて関西の店舗をまわりましたが、私は途方に暮れてしまいました。
どの店もきれいに整理されていましたが、何か事務所を見ているようで、味気なかったからです。
お客様に訴えかける売場にするには、地区長やチーフの考え方から変えるしかない、と思いました。
東京に戻ったあと、販売部門を統括するK役員に、関西の地区長とチーフにこちらに出張してもらい、
私の地区を見せた方が早い、と提案しました。

人を育てる難しさ

売上を上げるためには、どうやってお客様に「おや?」と感じてもらうか、です。
「安い」「デザインがきれい」「たくさん商品がある」etc、、、。それぞれ訴え方が違います。
本社から特価品が送られてきて、ただ並べて、価格の書いてあるPOPをつければいいわけではありません。
「何で安いのか?」「安いけれど何故お得なのか?」をアピールしなければ売れません。


ひとりひとりのチーフに売場の作り方を説明して、教育していくのはとても大変なことです。
当地区では、担当店舗の少ないときは、実際に私が売場を作ってみせて、売り上げを上げて、
「こうすれば売上が上がる」と体験してもらっていました。
しかし店舗数が20店舗にもなると、正社員チーフには売場を守ってもらうだけで十分、
アドバイスまでする余裕はありませんでした。


私自身、若手のころ、I部長から手取り足取り教わったわけではなく、部長の作った売場を見て、
仕事を覚えていきました。自分なりに工夫を加えることで、うまくいったり失敗したりしながら
売場づくりを学んでいきました。
この「工夫」というのは「企画力」になっていきます。
ある商品をよく売れるように工夫して、それが売場づくりにつながり、さらに店頭販売や催事、イベントの
企画につながっていくのです。


私の地区のスタッフ(正社員チーフ)は先輩ばかりだったこともあり、また私自身の忙しさで、
企画力のあるチーフを育てることはできませんでした。
社内でも「この人はすごい」と思うような人とは出会えませんでした。


人を育てることはとても難しいことですが、
もし新卒社員を何人か地区に預けてくれれば、基本だけ教えて、あとは自由にさせて「企画力」のある
社員を育ててみたかったです。