カメラ屋が明かす、『カメラ修理』本当のはなし

●直るカメラ、直らないカメラ

 カメラ修理で手こずるのはオートフォーカスの一眼レフやコンパクトカメラです。
これらのカメラは、まずあまりにも種類・機種が多い。前機種から流用している部品はわずかで、専用部品が多いのです。とくにバブル期の前後に大量に作られたコストダウンの目立つ機種は、いま現在部品がほとんど残っていません。言うまでもなく、これらAF一眼やコンパクトカメラは電子部品のかたまりです。電子部品が入手できなければ、手の打ちようがありません。それでもAF一眼はまだ直せることが多いカメラです。ニコン,キャノン,ミノルタ,ペンタックスの4大メーカーしか作らなかったので、結構、部品が残っています。もちろん、メーカー修理は不可能です。私たちカメラ店と付き合いのある修理屋さんならまだ直せる可能性があります。しかしコストダウンの極致といえる後期のプラスチックボディーのカメラ、そのうち生産数の少ないマイナーな機種は修理が困難です。一例を上げるとペンタックスのist(イスト)は電子部品が全くありません。逆に大量に作られたキャノンのEOS Kissシリーズやミノルタのαスウィートシリーズなどはまだ修理可能なことが多いカメラです。
 AFコンパクトでも同様のことが言えます。キャノンのオートボーイシリーズはベストセラーになったので部品が残っています。一方、色再現性の素晴らしさで、熱いファンのいるリコーのGRシリーズはわずかな部品しか残っていないので、修理が難しいカメラです。

まだ修理可能なカメラもあります。

●メーカーでは直らず、修理屋さんが直せるワケ

 カメラが生産中止になると、一定期間(5年から10年)メーカーは修理に対応します。しかしその期間が過ぎると、「修理受付終了品」となり、メーカー修理は出来なくなります。カメラメーカーは良心的な会社が多く、修理期間が終わっても部品が残っていて、修理可能な故障の場合は対応してくれるケースもあります。多くのフィルムカメラが生産を終えてから20年以上経つ現在、事実上メーカー修理で直る故障はわずかです。大手量販店やチェーン店はメーカーに修理を出すか、100人以上の技術者がいる大手修理会社に出します。この大手修理会社は古い部品をほとんど持っていないため、「修理不能」として返却されることが多いようです。
 私たち修理に力を入れているカメラ屋は「修理認定店」と呼ばれる規模の小さな修理屋さんにお願いしています。例えばニコンの修理認定店なら、それぞれのカメラの修理講習会を受講して、「そのカメラの修理はメーカー修理と同様の修理が出来ることを認めます」というおすみつきをもらいます。メーカーはカメラの生産が終了すると、全国の修理認定店にそのカメラのあらゆる部品を販売します。修理屋さんは「このカメラは修理の需要があるぞ。よし、たくさん買っておこう」などと判断して部品を仕入れます。天下のメーカーでも直らないというのに、何故、町の修理屋さんが直せるのか?と不思議に思うのは当然です。その秘密は修理屋さんにこそ、生産終了時に仕入れた部品のストックがあるから、なのです。

オーバーホールが出来ました

●カメラ修理、たよりになるのは街のカメラ屋さん

 部品のストックがある修理屋さんは、たいていの場合ホームページなどありません。下手をすると電話帳にすら載せていないところもあります。いたって小規模で2~3人の技術者で運営されているか、ご主人ひとり、奥さんが電話対応しているというのが一般的な修理屋さんです。多くは一般のお客様から直接、修理を受けつけているわけではなく、我々カメラ屋が窓口となり、送られてきたカメラを直しています。
そのため「腕が良く」「部品を豊富に持っている」修理屋さんにネットでアクセスすることなど不可能です。
古いカメラが壊れたとき、大手チェーンに断られたとき、本当に困ったときにたよりになるのは「修理に力を入れている」街のカメラ屋です。実はカメラ屋でも修理の取次はやりたくない、あるいはやらない店も多いのです。それはお客様への見積もり連絡など、手間がかかるわりには手数料が少ないからです。取られる時間を考えれば修理取次は割に合わず、消極的になるのは無理もありません。それでも修理を得意とするカメラ屋は、直せたときお客様に喜んでいただけて、それがカメラの購入など「次に」つながると考えているからです。もちろんそろばん勘定ではなく、困っている人を助けたい、という心優しい店主の方もいらっしゃいます。

●修理に力を入れているカメラ屋、どうやって見つけるか?

 カメラが壊れて困ったら、身近なカメラ屋さん、写真店に相談してみて下さい。断られたらご自身で店を探すことになります。「〇〇県 カメラ修理店」などと検索してみます。カメラ屋さんがヒットしたら、まずは電話で相談して下さい。その電話でたいてい直せるかどうかがわかります。ホームページの「お問い合わせ」から質問するより、電話の方が確実です。いい返事をもらえたら、その店にカメラを持参します。それでもどうしても店が見つからないときは、当店がお手つだいします。

●古いデジカメ、直る?直らない?

 メーカーの修理期間が終了して、かなり時間が経過したデジカメは、ほとんど修理不能です。頼みの綱の修理屋さんにも部品はほとんど残っていません。しかし例外もあります。当店では4つの修理店に断られたニコンのコンパクトデジカメを直してお客様に感謝していただいた経験があります。引き受けてくれる修理屋さんを探すのにずいぶん苦労はしましたが。しかし電子部品のかたまりであるデジカメは、部品が高額なので、よほど思い入れのあるカメラ以外は高価な修理代を払ってまで修理をするのか、よくお考えになった方がいいと思います。
デジカメの場合、総じてモデルサイクルが短く、修理屋さんに供給する補修部品も少ないので、時間がたつにつれ修理は困難になります。メーカー修理を断られた場合、フィルムカメラと同様にカメラ屋に電話で相談することをおすすめします。
これまでの経験からお話しすると、家電メーカーのデジカメより、フィルム時代からカメラを作っているカメラメーカーの商品の方が、直る確率は高いようです。それは古くからあるカメラメーカーの「修理認定店制度」がいまも生きているからだと思います。熱心な修理屋さんは、いまでも東京で開催される修理講習に参加され、部品の供給を受けています。いずれにしろ、古いデジカメの場合は「ダメもと」で修理に力を入れているカメラ店に相談してみて下さい。

デジカメの修理も部品次第です。